| まだ私がデザイン学校に通っていた時、いろんなアルバイトをしました。 その中でも最も印象に残っているのは、そこの掲示板で見つけた、 ギフト商品等を作っている小さな会社(町工場のようだった) での、デザイン提案のアルバイトです。
初めてのお仕事は銀行などで粗品として配るプラスチック製の印鑑ケースの デザインでした。 幼い頭をひねれるだけひねり、デザインをいろいろ悩み、マーカーパッドという紙に、 三面図と、姿図を描いた素人まるだしの画を、おそるおそる提出したのを覚えています。 でもそこの社長さんは、私のようなデザイナーのひよっこにも満たない者にとても 親切にしてくれました。 そんなつたないデザイン画を嬉しそうにじっと見つめ、褒めてくれ、ここをもうちょっと こうしたらどうやろう、とアドバイスをくれて、学生の僕を一人前に扱ってくれたのでした。
私は初めて実際の社会での商品を生み出す為の試行錯誤する行為にドキドキしました。 社長は現実の厳しさも教えてくれました。一つの粗品用の印鑑ケースでも、真剣に、 形の美しさ、使い勝手、製作のしやすさの為の設計などのあらゆる面からの考察を 示唆してくれました。 何回かの苦労の提案の末、実際に金型をおこして、商品となった時の感動は 今でも忘れられません。
初めて自分がデザインという仕事をさせてもらって、茶封筒に入った報酬を頂いた時の 気持ちは、何と言いましょうか、なんか申し訳無い様な嬉しいようなお尻がこそばゆいような 複雑な心境だったのを思いだします。 それまでは、レストランでの皿洗いや、喫茶店でのアルバイトばかりだったので、 全く違う手段で、お金を頂けたというカルチャーショックがありました。 その時、何となく、手ごたえというか、この道でやっていくぞという小さな決意が芽生えました。
今でもその社長さんには感謝感謝の雨あられです。
あれがスタートだったのだと。 あの印鑑ケースのデザイン提案のアルバイトをさせていただいてなかったら、 今の私はなかったかもしれません。 あの時の気持ちを大切にこれからもがんばっていきます。 | |